女性は男性よりも腰痛になりやすい要素を
いくつも抱えています。
身体の機能の違いから発生する腰痛もあれば、
女性特有の生活習慣が腰痛を招くことも。
さらに妊娠により腹部の重さが増えると、
やはり腰に対しての負担となります。
妊娠中だけでなく、出産後に腰痛になる人もいます。
もしかして、普段からヒールの高い靴を履いていたりしませんか?
ハイヒールはいわばつま先で立っているようなもの。腰への負担が非常に増してしまうのです。
また、ハイヒールを履くことで身体の重心線がズレてしまって、骨盤が傾いてしまうことも多々。これはハイヒールを履いているときに猫背になってしまっているから。逆にしっかり背筋を伸ばして歩けばカッコイイですし、腰痛にもなりにくいと言えます。
しかし、既に腰痛に悩んでいるのでしたら、ヒールの高い靴はやめて、低い靴で過ごすようにしましょう。
ショルダーバッグを愛用している女性も注意が必要です。
片方の肩に重みが加わった不均衡な状態が続くため、腰に負担をかけてしまいます。
女性特有の身体におきる現象といえば月経。月経前や月経中に腰が痛くなる…というケースもよくあります。
月経の2週間~1週間ほど前から腰が痛くなり、月経開始とともに痛みが消えていく症状を月経前症候群(げっけいぜんしょうこうぐん)または月経前緊張症といいます。
月経前症候群は腰痛だけでなく、下腹部の膨満感や頭痛、乳房痛、関節痛、めまい、動悸などさまざまな症状と並行して発生し、その内容は人によってさまざまです。
また、イライラしたり落ち込んだり、憂鬱になったり、緊張したりと、精神的な症状も現れます。
月経前症候群になりやすい人は、繊細な心の持ち主で神経質な人。自律神経の乱れや、ホルモンバランスの崩れによって症状が起こると考えられていますが、詳しいことは判っていません。
子宮や卵巣などの異常によって痛むこともありますが、大体は精神的ストレスの問題であることが多いようです。
疲れやストレスを溜めず、溜まりそうになったらすぐ解消し、リラックスした環境を作って過ごすようにしましょう。
月経前症候群とは逆で、月経がはじまると腰痛が激しくなる症状を月経困難症(げっけいこんなんしょう)といいます。
下腹部の強い痛みを伴うことや、吐き気や頭痛がある場合もあります。
月経困難症には3タイプあります。
まずひとつめは思春期の女性に多く、加齢とともに症状が消えていくタイプ。これは鍼灸やカイロプラクティックなどの保存療法で治療します。
ふたつ目は、黄体ホルモン(おうたいー)と呼ばれるホルモンの分泌に問題があるタイプ。黄体ホルモンは子宮からプロンスタグランジン(prostaglandin)と呼ばれる物質を分泌します。この物質には子宮を強く収縮させ、腰痛を起こす働きがあるのです。
このタイプの人は、月経期間中はストレスを溜めず、リラックスして過ごすことを心がけ、身体をほぐして筋肉のこわばりを解消するようにしましょう。心のケアが腰痛改善の一歩なのです。
そして最後のタイプですが、いわゆる子宮が病気であることから腰痛になるケースです。
こちらについては別ページで詳しく説明しています。
妊娠3カ月を過ぎると分泌される女性ホルモンにリラキシン (relaxin) があります。リラキシンには骨盤の関節を緩める働きがあり、骨盤の関節や靱帯に限らず、身体じゅうの関節もまた緩むことがあります。
これにより、関節の動く範囲が増大し、関節を支えるために周囲の筋肉や腱などへの負担が増えてしまいます。
その結果、腰痛が発生するのです。
妊娠してお腹が大きくなってくるということは、当然お腹の重さも増えるということ。平均すると妊娠中に10~14kgもの体重が増加します。お腹が大きくなるに比例して体重が増えるわけですから、妊娠末期に近づくにつれ腰への負担が増加。
よって妊娠中期から末期にかけて、腰の痛みを訴える女性が増えるのです。
また姿勢も大きく関係します。腹部に重みが増えて行くに従って、ついつい前のめりの姿勢をとってしまいがち。そこで重心のバランスをとろうと背中を反らせることで、脊髄に負荷が発生するのです。
また、以前から腰痛持ちだった場合は、妊娠によって悪化することもよくあります。
先述したとおり、妊娠中にリラキシンの分泌で関節が緩みますが、出産時に骨盤の間を赤ちゃんが通ることで最大の負荷がかかります。その際、恥骨結合部が圧力で開いてしまい、産後に恥骨結合部の圧痛や疼痛が起きることがあります。
具体的には歩行時に足に力が入らず、階段の上り下りの際に痛んだり、歩行困難になるなどの症状が発生します。これを恥骨結合分離症といいます。
疑わしく感じたら、まずは婦人科で超音波検査を受けましょう。
産後に骨盤の開きが起こり、身体の重心が変化することで起きる仙腸関節症候群であるおそれも念のため考慮しておきましょう。
こちらについては別ページで詳しく説明しています。
腰が痛むときに無理は禁物。安静が一番です。腰を温めてじっとしていましょう。ぬるめの風呂に長く浸かるのもいいでしょう。
逆に、痛みがないときはなるべく、動くようにして筋力を無理のない程度に駆使します。
とはいえ、注意すべき点も。
バッグはショルダーバッグにし、なおかつ毎回懸ける肩を変えましょう。いつも左肩ばかりとか右肩ばかりだと腰痛が悪化します。
家事で掃除機をかけたり炊事の際にも、どうしても前傾姿勢になりがちですが、これにも注意。なるべくまっすぐ身体を保つようにします。ソファやベッドの下を掃除する場合も、腰を曲げるのではなく、ヒザを曲げてするようにします。
床の物を拾う時や、洗濯カゴから洗濯物を取り出す時も同じことです。腰を曲げてではなく、ヒザを曲げてしゃがんでから取る、これを徹底してください。
痛みが無い時は家事だけでなく、積極的に筋力を付けるようにしましょう。オススメは手軽にできるストレッチです。
仰向けになり、両手を首の後ろで組みます。両足は膝を立てて揃え、そのまま身体は真上を向いたまま、両膝をぐーっと左床に押し倒します。そのとき、肩を床から離さないように。
10秒経ったら、今度は両膝を右床へ。
続いて今度は手を床について四つん這いになります。
両手両足は肩幅以上に開かずに、まずは顔を上げて息をゆっくり吸います。息を吸いながら腹を床方向へゆっくり押し下げましょう。腰が少し反れるくらいが目安。
息を吸い終わったら、今度は顔を下げて息をゆっくり吐きながら、背中を盛り上げる感じをイメージして動きます。
ストレッチのほかにも、マタニティヨガやマタニティスイミングの講座などを利用するのも良い方法です。
また、腰が痛いからと安易に薬に頼るのも考えものです。専門医の指導の範囲で服用するようにし、骨盤ベルトなども上手く活用しましょう。
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腰は温める?冷やす?